忘れてしまった物語 17
あれから―――。
花沢類は仕事が終われば、毎日のようにここに来るようになって
一緒にご飯を食べたり・・・今までの時間を
取り戻すかのように傍にいた。
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あれから―――。
花沢類は仕事が終われば、毎日のようにここに来るようになって
一緒にご飯を食べたり・・・今までの時間を
取り戻すかのように傍にいた。
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「あんたが牧野の――。」
「俺は、つくしを妹なんて思ってない。この子の父親に
なってもいいとさえ思ってる。」
牧野のことをつくしと呼び、家族として暮らしてきたという・・・。
離れていた3年の月日が重くのしかかる。
俺だって、会いたかった・・・牧野の傍にいたかった。
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早く、キスして抱き締めて俺のものだって言いたいのに
簡単にはいかない雰囲気が漂う。
でも、どんなことがあっても牧野だけは・・・
・・・このまだ幼い俺の娘だって諦めるつもりないから。
決意も新たに、子供をあやす横顔を見つめる。
やっと、3年経って巡り会えた牧野は、
優しい母親の顔をしていた。
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「蛍!!」
俺の腕から、蛍を受け取ると頬ずりする。
「・・・・・・花沢類ありがとう・・・見つけてくれて。」
変わらないその呼び方。
牧野の声を聞いただけで、世界が変わった気がした。
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蛍の舞う里へと今年も一人訪れる。
無数の光りに包まれながら、空を見上げた。
「俺は今年も来たよ・・・・あんたは今、幸せ?ちゃんと笑ってる?」
一人でここに来るのも、3度目。
もう、牧野を捜してもいいってことなのかな。
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あたしの元に生まれて来た天使。
女の子なら、絶対この名前と決めていた。
蛍。そう命名した。
あたしの中で育まれてきた花沢類とあたしを繫ぐ命。
真っ黒な髪はあたし譲りだったけれど、
すっとした鼻筋・・・口元は花沢類と似ていて
嬉しくなった。
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家へ帰って、縁側に二人並んでお茶を飲んだ。
梅雨明けはまだだったけれど、今日はまるで夏のような陽射しが照りつけ
ぐんぐんと気温が上昇する・・・。
遠くの山を見つめながら、
あたしはここに来たいきさつを亜門に話し始めた。
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亜門に勧められるまま、
その日は町の小さな病院へ行った。
「ご懐妊ですね、おめでとうございます。」
そう医師に告げられて・・・・あたしの妊娠は決定的となった。
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「・・・もう妹なんだから、これからはお兄ちゃんって呼べ。」
「・・・お、お・・・お兄・・ちゃん/////」
「バーカ。何恥ずかしがってんだよ。」
ぶっきらぼうな言い方だけど・・・優しい目をしてあたしを見てくれる。
ここにいてもいいんだ――。
こうして、亜門との生活が始まった。
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夜中に・・・絞り出すような苦しげな声を聞いた。
叫びと呼ぶには密やかで・・・悲しみに満ちた魂の慟哭。
隣の布団の中には、幼げな表情とは裏腹に
悲しみに暮れるつくしの姿があった。
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「・・・お前は?」
そう聞かれて、なんと言って答えたらいいのか分からず
黙り込むことしかできなかった。
「・・・・・・・・・。」
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「どうか、あたしを住まわせて・・・どんな仕事でもするから。」
そう伝えたくて必死になるのに、うまく話せない。
ゆっくりと頭の中に紗がかかるみたいに考えられなくなって
どんどん重くなっていく言うことをきかない身体。
そして、真っ暗な闇に放り出された。
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「あたしは一人で生きていく・・・また巡り会える時まで。
花沢類を信じてるから。」
NYからの帰りの飛行機の中、あたしは自分自身が言った
その言葉を胸に抱き締めて、
これからのことを考えていた。
――ごめんね、花沢類の元へは帰れなくなっちゃった。
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「道明寺のことは好きだったし・・・恋してた。
でも、寂しかった。あたし、あんたが思ってるほど強くないよ・・・。
いつもどんな時も一緒にいて支えてくれた花沢類のこと
気がついたらまた好きになってた。
今は・・・愛してる。」
「俺は、何のために・・・・畜生っ!!」
握りしめた拳を壁に打ち付ける・・・。
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「このままじゃ、ダメだよね・・・花沢類も道明寺もあたしも。
もう、気持ちは偽れないから道明寺に会ってくる。
ちゃんと別れてくる。これはあたしたちの問題なの。
必ず、必ず帰ってくるから、花沢類は日本にいて・・・待ってて。」
そう約束をして、NYの 道明寺を訪ねた。
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※「答えの返らない問いかけ」の続編です。
「あんたは今、幸せ?ちゃんと笑ってる?」
NYへ行ったきり牧野と連絡がつかなくなって、一人で行かせてしまったことを
後悔したけど・・・どうしようもなくて。
司に連絡を取ろうとしても、なしの礫。
このままじゃ、牧野を失ってしまう――必死の思いでNYへと向かった俺に
突きつけられた現実・・・・・。
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ねぇ、牧野――。
二人で蛍を見に行った時のこと、覚えてる?
今年もまた、この季節が巡ってきたよ。
どんなに想っても、届かない想い・・・そして、答えの返らない問いかけ。
「あんたは今、幸せ?ちゃんと笑ってる?」
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「ね・・・俺たちこれからのこと考えよう?
今まで苦しみや痛みを乗り越えてきたんだから、これからは幸せなことが
いっぱい待ってる。もう苦しまないで・・・これからは俺がずっと傍にいる。
あんたを守るから。」
あの頃のあたしなら、守られるだけの存在になりたくなくて
対等になりたいと思ったはず。
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※ねぇ、どこにいくの?の続編です。
お互いの気持ちを思いやりすぎて、一歩が踏み出せなかった日々。
自分の気持ちに正直になれなかった。
失ってから気付く存在の大きさ・・・・。
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「ここで過ごしたこと、少しは想いだしてくれた?」
「思い出すも何も、あたし達ここが大好きだったじゃない――。」
「ここもだけど、俺は・・・・
あんたが好きだったからここにいた。
今も変わらない。やっぱり・・・・好き、なのかな?
・・・・・愛しちゃってる、かも。うん、そうみたい。」
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腕を掴まれたまま、花沢類が運転する車に乗せられた。
あたしを押し込むように乗せると、こちらを見ようともせず
黙ったまま運転を始める。
「どこへいくの?」それさえ聞けずに、黙って座っていた。
流れていく車からの景色に、日本へ帰ってきたことを実感する。
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西門さんちまで行ったものの、話を聞いてみれば
明日のお茶会の準備があるという――。
「いいから・・・来いよ。」
そう言う西門さんを振り切り
運転手さんにお願いして駅まで送ってもらった。
ビジネスホテルなら、少しくらい滞在していられる――。
早く住むところと仕事を見つけなきゃ。
あたしは落ち込んでる場合じゃないと自分を叱咤して
ホテルのフロントへと向かった。
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あたしの横に車が横付けされると、腕をぐいっと引っ張って
あっという間もなくその車内へと引きずり込まれる。
一瞬、誘拐かと思い恐怖に身が竦んだあたし。
よく考えたら道明寺と縁が切れた今、あたしなんて
狙う人なんかいない・・・。
顔を上げるとそこには、何故か西門さんと優希がいた。
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その日、午後から急に降り出した雨。
来週からと言われていた梅雨入り宣言が出された。
・・・あたしはここに戻ってきた。
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類の腕の中で目覚めた朝・・・・。
あたし達の新しい一歩が今始まる。
この気持ちを、記憶が戻ったことを早く伝えたいと思った。
コンプレックスだらけの身体も花沢類に愛されたことで
かけがえのないものに感じるから不思議だ。
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花沢類のことが好きで、だからこうなることも受け入れた。
でも、あたしの裸をみられてると思った時・・・怖くなった。
だって、小さな胸はコンプレックスの固まりだったし
頭にふと「静さん」の名前が浮かんだ時、
泣き出したい気分になった。
比べられたくない・・・その思いはあたしの幸せな気持ちを
打ち砕くのに十分だった。
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「う・・・・ん。」
おでこや頬・・・のくすぐったい感覚。そして唇にも――。
あたしはとっても幸せな気分で、夢から覚めてゆく。
閉じられていた瞳をゆっくりと開いた時
あたしの目に映ったのは食い入るように見つめる花沢類。
あたしは、嬉しくなって・・・にっこりと笑いかけた。
「おはよう・・・・花沢類!」
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花沢類が必死になってあたしに気持ちを伝えようとしてくれた。
上手く言葉を紡げなくても・・・あたしに向かうその気持ちは
十分に伝わってきた。
あたし・・・・こんなに想われてたんだ。
こんなに大事にされてたんだ。
胸がいっぱいになった。
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自室のベッドに倒れ込み目を瞑っていても
頭に響いてくるつくしの泣き声・・・耳について離れない。
あの笑顔は、本当は俺に向けられたものじゃなかったんだ。
あの言葉も・・・・。
もう、何も考えたくない・・・・。
俺は、夢も見ずに眠れるように医師から処方されている
睡眠薬を飲んだ。
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各部屋に備え付けのシャワールームと化粧室。
あたしは鏡の前に立って、まだ腫れぼったい目を気にしていた。
・・・・こんなに泣いたの久しぶり。
いつも花沢類が傍にいてくれたから、悲しくなかったけど
今日はあたしが遠ざけちゃったんだもん。
自業自得よね。
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診察を終えた牧野に、近づいていく。
つくしは、苦しそうな表情をするばかりで顔を見ようとしない。
「つ・・・牧野」
つくしと呼ぼうとしていたのに・・・牧野と呼ぶしかないと
悟った瞬間心が痛かった。
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枕元のライトをつけようとして手を伸ばすと、バサッという音と共に
何かが落ちてきた――。それは類からもらったあの洋書だった。
そっと開いてみると、チューリップが今も変わらず・・・色褪せずにあった。
ちゃんと大事にしててくれた。何となく嬉しさがこみ上げてきた。
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――道明寺――
不意に浮かんだその言葉は、あたしを現実に引きずり戻した。
類と付き合っているというのなら、道明寺とはどうなったの?
現実のスピードについて行けず、呆然とする中
あたしの担当医と呼ばれる人がやってきて問診を受けた。
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「・・・どこで何をしてて倒れたか覚えてる?」
躊躇いがちに・・・あたしの反応を探るみたいに聞いてくる。
モヤモヤとした何とも言えない気分。
どこかスッキリしない。
「どうしてそんなこと聞くの?」
考えても出てこない答え・・・・事故にあったから病院にいるんでしょう?
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「・・・どこで何をしてて倒れたか覚えてる?」
「どうしてそんなこと聞くの?」
一瞬きょとんとした顔をした後
「倒れたって・・・事故だよ?
でも・・・こうして何ともなかったんだから。
事故の瞬間のことははっきり覚えてないんだけどね。」
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ガタっと言う音と共に、目の前の牧野の身体が崩れた。
・・・・つくし!
叫びたい気持ちとは裏腹に
喉に声が張り付いたみたいに声にならない。
その少しの距離がもどかしく、傍に走り寄って抱きかかえた腕の中
つくしは意識を手放した。
「つくし!しっかりして。」
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司との一件に決着をつけ、
牧野と二人で日本に帰ってきた・・・。
これからが、本当の俺たちの始まり――――。
微笑み合い、見つめ合い・・・・邸へと帰った。
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「・・・・そんなとこへ、牧野は来させらんねーだろ!
身の危険だって、・・・あり得るんだから。
牧野が俺を選んでくれるなら、道明寺なんざクソ食らえだ。」
司が苦しい胸の内を吐き出した。
こうなったら、きっとお人好しなつくしには選べない・・・・。
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「だぁぁぁあああああああああ―――――っ!!」
部屋には俺たちの笑い声と、司の雄叫びが響き渡った。
それは一瞬にして、つくしとのギクシャクしていた関係を
吹き飛ばした。
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香港の経済・・行政の中心である「中環(セントラル)」でも一際高いビルの最上階。
そこで、司との対面となった。
つくしは緊張のあまり顔色を失っていた。
ここに連れてこられた時、狭い地区に聳え立つ様なビルの高さに
つくしは空を見上げ絶句。
――世界でも3本の指に入る高さ――
それが売りの香港のシンボル的ビルだった。
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今のつくしは俺の事を一番に想ってくれている――。
俺もそれを分かっていて、だからこそ司と向き合うつくしを
見守ってやりたいと思ったのに
頭で理解するのと気持ちは別なんだって事
気づかされる。
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突然後ろから抱き締められて、途切れた言葉。
身を捩って、振り仰いだ瞳に映るのは
切なげにあたしを見つめる類の真剣な表情だった。
あたしはその瞳に魅入られたように
固まって動けずにいる。
あたしの肩にのせられていた手が
そっと頬に添えられた――。
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こうして、あたし達は機上の人となった。
それぞれの胸に、期待と不安を抱いて―――。
プライベートジェットなんて、持ってる人いるんだね・・・。
ほっと一息ついて、機内をキョロキョロと見渡す。
着いてからのことを考えて、あたしは青くなった。
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泣き笑いするあたしの前に、息を切らした類が現れる。
あたしの瞳に浮かぶ涙を見て、
さっと類の表情が変わった。
「・・・つくし、どうしたの?!」
気がつくと、あたしはきつく・・・ギューッと抱き締められていた。
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「・・・・・・・つくしちゃんが、待っていてくれたから
二人は元に戻れたの。」
椿さんから聞くあたしはやけにリアルで婚約者・・・
道明寺さんとの恋愛が確かにそこにあったことが分かる。
あたしの知らない過去。
それを目の当たりにして胸の奥がざわめいた。
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「つくしちゃん・・・・あなたには幸せになって欲しいのよ・・・。」
心からそう思うからこそ、この3人の関係が気がかりで
ため息が漏れた。
気持ちを切り替えて、つくし達のいるリビングに戻る。
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「類様・・・道明寺椿様よりお電話です。」
つくしへと想いを馳せていたが
一瞬にして、幸せな空気が吹き飛んだ。
ドクン、ドクン。
途端、鼓動が早まり・・・・背中を嫌な汗が伝った。
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「どう?上手に結べたでしょっ」
前に回って、ネクタイを整えてくれるつくし。
上手く笑えなくて・・・ぎこちない笑みを浮かべた俺がいた。
「どうした、の・・・」
俺の顔を見て、途端に表情を曇らせるつくし。
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「じゃ、もう一つお願いしていい?」
「・・・変なことは無理だよ?」
つくしが警戒する。でも、そんなんじゃないんだ。
あのネクタイを結んで欲しいだけ――。
箱から取り出したのは、青空を切り取ったかのような
鮮やかなブルーのネクタイ。
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つくしは、家族との絆を新たにし
水入らずの時を過ごした。
「・・・いつでも遊びに来てください。」
そう言う類の隣で、嬉しそうに微笑んでいるつくしは
まるで花沢に嫁いだようだと錯覚するほどだった。
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つくしの病状を気にしていた、家族。
命に別状はなく回復していることに安心はしていたけど
記憶がない・・・そのことに戸惑っていた。
つくしが会いたがっていることを伝えると、すぐにでも
会いに行くと、言ってくれた。
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類はいつもだって、どんなときだって・・・
もあたしの気持ちを優先してくれる。
そんな誠実な姿に、どんどん惹かれていくんだよ。
記憶のあるなしに関わらず
あたしの安らぎはここにある・・・きっとそれは変わらずに。
髪を撫でられる度、切なさにキュンとなって・・・胸が熱くなる。
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「・・・つくし?」
部屋はあらかた片付けられて、段ゴールが3つ空っぽになっていた。
つくしの姿が見あたらず、ぎゅっと心臓を掴まれた気がした。
「つくし、どこ?」
もう外は暗くなってきているのに電気もつけられていない室内。
月明かりが優しく照らす、庭に面した窓の下
牧野は膝を抱えて蹲っていた。
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病院の玄関に横付けされた黒塗りの車。
花沢の車が迎えに来たのを目を丸くして見つめる牧野。
「お金持ちそうって言うのは分かっていたけど・・・
すごいね。あたし凄い人たちと知り合いだったんだね。」
「今、つくしは俺の大切な人でしょ?」
「うん・・・類。」
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今の牧野は・・・俺を求めてくれている。
その事実に、心が震えた。
なのに、牧野は俺の言うことを信じてくれない――。
静の言葉が脳裏をよぎる。
「私は来ない方が良かったかもしれないわね。」
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あたしは、自分を見失っていた。
――これがあたしの望んだことなの?
道明寺がどんどん遠くなる――
だから、どんどん自信がなくなって臆病になって
戦うことが出来なくなっていった。
週末ごとにドレスを纏い、あいつの横に立つことが
苦痛で溜まらなくなり
ついにはそのヒールを・・・身に纏うドレスを脱ぎ捨てた。
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正面玄関で別れ・・・病室に足早に戻ろうとして、
ナースセンターに立ち寄った。
こっちにしゃべる間を与えぬスピード・・・
「牧野さんに伝えてくださる?緊急搬送の患者さんの受け入れで
遅くなるので、後で呼びに行きますって。」
それだけ言うと、足早に検査室へと消えていった。
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親愛なるryuiへ
「Blue-planet」ブログ1周年記念
切なさと幼さの10のお題よりリクエスト
※ギリシャ文字は正しく表示されませんので日本語とカタカナで書いています。
※英語もルビ入力が大変なので日本語とカタカナで書いています。
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バイトもそろそろ終わる時間――。
花沢類はまだ来ていないみたいだったけど
あたしがソワソワし出すのを優希が笑って見ていた。
そこに、背の高い男の人が入ってきた。
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※ 「迷子でいいから」の続編です。
「分からなくて、いい。迷っててもいい。
牧野が俺を否定しないなら。
・・・迷子でいいから、そのままのあんたで俺のとこに来てよ。」
「決まりだよ?これで昨日のこと許してあげる・・・。」
呆れられたと思っていたあたしは
花沢類と一緒にいられることに安心した。
でも、これってあたしたち付き合うって言うことだよね?
戸惑う気持ちはあっても、嫌な気持ちは一つもなかった。
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いつしか、二人の間の空気はあの頃と変わらず
穏やかで・・・安らげた。
変わらず、自然に信頼し合っていると思っていた。
だから、俺と牧野の間に溝が出来るなんて事を
考えてもいなかった。
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※ 「.たった一欠片」の続編となります。
道明寺に別れを告げられた日。
どんな想いで別れを言ったのか
あたしは道明寺の気持ちも、自分の気持ちも
そして花沢類の気持ちも・・・・、何一つ分かってなかった。
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突然、やってきた別れ。
それも一方的に。
何が何だか分からなかった。
道明寺との恋に破れたあたしは
全力で戦い、走り続けた結果・・・身も心も疲れ果て、
生きる気力さえ失いかけていた。
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風に揺られた枝がしなり、ひらひらと桜の花びらが舞い落ちる。
満開の大きな桜の木の下で、牧野は両手を
空へ広げ全身で受け止める。
そんな様子を・・・・少し離れたところから見守る俺。
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司に自分の気持ちを伝えたことで
後ろめたさが消えた。
ようやく、スタートラインにたった俺。
覚悟を決めたら・・・牧野が誰を選んでも、きっと生涯この想いは
変わらないんだと気づいた。
だったら、出来る限りのことをするしかない。
司も本気で取り返そうとするだろうから。
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その夜、司から連絡が入った。
「悪かったな・・・連絡できねぇで。牧野はどうだ?順調か?」
「・・・・司。牧野の状況を知らないの?
道明寺は何をやってるの?仮にも・・・婚約を控えてるんでしょう??」
知らされていないなんて・・・おかしい。
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俺が決意を固めてから、司には連絡が入るように
俺付きの秘書に手配させておいた。
――時間が空いたら、話がしたい。至急連絡をして欲しい。
大切な話がある。
牧野のことを思うなら、今夜にも連絡があるはず・・・。
司・・・そして道明寺の対応を聞かせてもらう。
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「牧野は、退院したら邸に来ることが決まったんだ。
俺が・・・・牧野を守るよ。
司にも俺から、連絡するから――。」
――ついに動いた。
来るべき時が来た・・・というべきか。
自分から司に連絡を入れると言い切った類に
何も言うものはいなかった。
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「大丈夫。勝手に決めたりしないよ。
みんなも悪気はないんだ。誰も牧野を責めたりしない。」
髪を撫で、幼い子をあやすみたいに優しく語りかける。
「花沢類!」
牧野は類に抱きついた。
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「だったら、伝えてもらえませんか?
・・・・婚約を白紙に戻して欲しいって。」
「「牧野?!」」
「やっと、正式に認められたんだぞ?
あんまり、結論を急ぐな!」
「そうだよ、つくし。
記憶が戻った時、後悔しても遅いんだから。」
慌てて皆が説得しようとする。
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「同い年だから、もっと砕けた言い方でいいよ。
あたしみたいに。」
優希ちゃんがふんわり笑う。
つられたように、牧野もぎこちないながら笑顔を見せた。
その言葉を皮切りに、それぞれが自己紹介をし
ようやく場が和み会話が出来るようになってきた。
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あたしの意識が戻ったという話を聞いて、
午後になって「友達」がお見舞いに来てくれるという。
病室に入る前に・・・担当医師があたしの今について
話してくれるから、覚えてないことを気にすることはない・・・
そう言ってくれた。
あたしの友達ってどんな人なんだろう・・・。
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記憶をなくしても、変わらない牧野の本質・・・。
ベッドに大人しく寝ている訳もなく、起き上がってみたり。
見張ってなきゃ、病院の中をウロウロしかねないなと見ていると
伸びをして――。
「ん―――、気持ちい・・・痛っ。」
やっぱり目が離せない。
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目覚めたとき、初めて目にした人物が
「特別なトモダチ」の花沢類。
記憶がないなんて言う、自分自身の非常事態だったにも関わらず
薄茶色の髪の・・・
まるで天使のように綺麗な顔をした男の人がいて
パニックになって叫び、暴れるあたしのことを
抱き締めた・・・・そのことを客観的にみているあたしがいて
鮮明に覚えている。
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「・・・・・ねぇ、知ってるんでしょう?あたしのこと。
あたしは誰?どうしてここにいるの?
あなたは私の何?
・・・・何も、何も思い出せないの。
記憶が何も、ない・・・。」
牧野の唇から紡ぎ出される言葉を
信じられない思いで聞いた―――。
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あいつらが帰って、二人きりの病室。
こんな非常事態・・・不安は尽きることはなかったけど、
それにもかかわらず、どこかで傍にいられることを
喜んでいる俺がいた。
最低な奴、だって自分でも思う――。
寝顔を見つめていた俺は、ここ数日ろくに眠っていなかったせいもあって
いつしか、俺は眠りについていた。
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牧野は3日間眠り続けた。
巻き込まれたのが衣服だけだったのが幸いして
打撲と骨折だけで済んで、内臓の損傷はなかった――。
一命は取り留めたものの、頭部に強い衝撃を受けたから
楽観視ばかりも出来ない。
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間もなく手術が終わり、病室へ移された牧野。
頭に巻かれた白い包帯が痛々しい。
どうしてこんな事に・・・・
何で牧野が、巻き込まれなきゃいけない?
牧野が目を覚ますまで、傍にいたかった。
俺に出来る全てのことをしたかった。
点滴に繋がれた、手を包み込むようにそっと握った。
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4年間の遠距離恋愛に終止符を打つときが来た。
この春、晴れて正式に司と婚約をすることになり、1ヶ月後には司が
NYから帰ってくると聞いた。
とうとうその時が来んだ・・・・。
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あたしは暗闇の中にいた。
暗くて・・・何も見えない、音すら聞こえてこない。
ただ、一人佇んでいた。
何もないその空間では、自分が生きてるのか死んでるのか
それさえあやふやで。
じわじわと追い詰められる。
誰か・・・誰か助けて!
お願い・・・あたしを、ここから連れ出して――。
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非常階段の扉が開く音がして、誰かが来た。
ローファーの音を響かせて歩く、独特な歩き方
・・・牧野。
途端に、世界が明るくなった。
そして、心が温かくなる。
こんなにも、必要としているんだ。
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春休み・・・来なくてもいい学校に来るのは
いつも牧野と過ごすここにいると落ち着くから。
牧野を誘ってうちで花見をしたときに、思わず零れ落ちた本音。
牧野に告げた何度目かの告白――。
言うつもりなかった、けど・・・
自分でも押さえられないとこまできてたみたい。
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晴れた日の午後、あたしは非常階段へと出かけた。
もう、川沿いの桜は、ほぼ咲きそろっていた。
それでも、心に浮かぶのは花沢類。
その人だった。
どうしてこんなに気になるんだろう?
あんな風に言われたから?
・・・そりゃ初恋の人だもん、ときめいちゃうよね。
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「俺の気持ち・・・変わってないから。
今も牧野が好きだよ。」
「花沢類・・・。」
ずっと想ってってくれたなんて・・・。
なんて言って応えたらいいのか言葉が見つからなかった。
そんなあたしに、それ以上何も言わず
いつものようにただ傍にいてくれた。
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また・・・今年も桜の季節がやってきた。
桜前線が・・・
お花見スポットが・・・
ニュースでも取り上げられ、満開の桜がテレビの画面
いっぱいに映し出される。
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「・・・あたし・・・もう、駄目みたい。」
「俺も・・・自分のことで精一杯だ。
お前にまで手が回らねぇ・・・守って・・やれない。」
こうして、あたしたちの恋は静かにその花を散らし
終わっていった。
そして・・・あたしはこの恋の想いの残像に
苦しむことになるなんて思いもしなかった。
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あたしは・・・世界の違いにもがき苦しんでいた。
何も出来ない事への苛立ち
ただ、傍にいたいだけなのに・・・
もっともっと近くに行きたいだけなのに。
どうして・・・。
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※アンジェラアキの「さくら色」からのインスピレーションです。
司つく→類つくへとなりますので、ご了承下さい☆
学園の裏・・・・川沿いの満開の桜の下で誓い合った。
「牧野・・・俺と生きてくれ。」
「うん、ずっと一緒に・・・いたいよ。」
肩を並べて、二人で歩いたあの日。
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「二人の時なら、良いんだね?」
「えーと・・・たまに?なら。」
「やだ。」
そんなの良い訳ないじゃない・・・。
いつだって触れていたいのに。
運選手を気にして、おかしなくらい動揺する牧野。
そんな風だから、余計に苛めたくなるんだよ・・・。
マンションの部屋まで、申し訳なさそうにしながらも
こたつを運んでくれた運転手に、牧野は何度もお礼を言っていた。
二人で見送り、玄関のドアが閉まる。
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牧野を幸せにするためになら、なんだってやってみせる。
「もう、悲しませたりしない。だから、俺の隣で笑ってって。」
牧野の甘い唇に、誓いと共にキスを。
そして、牧野と付き合って知った・・・
好きな人とのキスは、こんなにも心地いいってこと。
掠めるようなキスをしてきたときは、
ただ切なかっただけだったから。
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朝、目覚めるといつも隣にある温もり。
あたしはその温もりに抱き締められているのに・・・いない。
類が、いない。
確かに昨日も一緒に・・・抱き締め合って
愛し合って眠ったのに。
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※これは「YOU and I」の番外編・ホワイトディのお話です♪
記念日、なんて言うと特別な日みたいだけど
違うんだ。
ふとした日常の中にある、瞬間の数々。
その一瞬一瞬が、ことあるごとに思い出されて
その度に幸せな気持ちになれる・・・。
そんな日々の積み重ねこそが
大事だと思えるようになったのは、牧野と暮らし始めてから。
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アパートにこたつを取りに寄って
ここで別れなくていいんだ――。
そう思ったとき、じんわりと幸せがこみ上げた。
これからは、帰る場所も同じ。
ずっと一緒、なんだね。
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まずは花沢御用達のショールームへ出かけた。
そばに立ち、俺の服をぎゅっと掴んで離さない牧野が
可愛かった。
「すごっ!この広さ何?目移りしちゃうね・・・。」
俺たちの姿を見つけて、飛んで出迎えた支配人。
いつも無表情の俺が、ニコニコして牧野をエスコートしてるから
大事な人だって分かったみたい。
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牧野からの提案で決まった
二人の部屋作りのためのショッピング。
普段、余り物を欲しいなんて言わないから
今日はチャンスだと思う。
ここには、何が必要・・・・そう言いながらメモをとったり
相変わらず忙しい牧野だけど、
これからの生活を夢見て、つい顔がほころぶ。
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朝の光に包まれた花沢類は
本当に空から降りてきた天使のよだった。
薄茶色の髪が光りを浴びて金色に輝いていて
あたしは、じっとそれを見つめていた。
こんな無防備な花沢類を独占しても良いの?
もう、あたしの心の中は花沢類でいっぱいだった。
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あたしの不安を見透かすように、頭を撫でられた。
「素直になれって言っただろ?」
「自信持てよ・・・お前は、類が惚れてる女だぜ?」
「・・・ありがとう。お兄ちゃん。」
壁にもたれ、あたしたちのやりとりを見ていた花沢類は
身体を起こし、あたしの腕を引っ張った。
「もう、いいでしょ?お兄ちゃんたちは帰って。」
顔を見合わせる二人の前で、ひらひらと手を振った。
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「牧野、一緒に暮らそう。」
「ご両親の許可は取ってあるんだ。」
「「「えええ??」」」
異口同音・・・私たちは一様に驚く。
「うん。うちの両親も、牧野のこと理解してくれた。
だから、何も心配しなくていいよ。」
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俺の誕生日が数日後に迫ったある日。
カフェテラスで、牧野が俺に話しかけてきた。
「美作さん、もうすぐ誕生日だよね。
いつもお世話になっているから何かしたいんだけど、
あたし今、本当に金欠なのよね・・・。」
お前・・・自覚がないからと言って、そうやって上目遣いに
俺のことを見るなよ。
いつも隣にいる奴が余計なやきもちを焼くから。
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あたしはその言葉に、胸が高鳴る。
あたしと花沢類の特別―――。
コクリと頷いたあたしを確認して
花沢類が耳元で、囁く。
「いつでもどこでも、抱き締めてキスしていいって言うのはどう?」
「いつでもどこでもって・・・/////」
「それって彼氏の特権でしょ?ね。」
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「行こうか。」
あたしたちは、肩を並べて教室を出た。
素直にって・・・どうしよう?
隣を歩く姿をチラッと盗み見る。
花沢類は華奢そうに見えて、意外にたくましかったりするとこや
あたしとは違う大きな手・・・・
そんなことばかり気になって、あたしはドキドキしてしまう。
いつものようにさえ話せなくて。
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思い切って相談してみたあたしの悩み。
からかわれるだけ?と警戒しつつも打ち明けたのは
やっぱり、信頼してるから。
呆れながらも・・・美作さんと西門さ・・・
あ・・・お兄ちゃんたちは、素直になれって言ってくれた。
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牧野はずいぶん躊躇ったあと、ようやく話す気になったらしい。
「絶対誰にも言わないでね?花沢類にもだよ?
あたしたち・・・ね、キスから先に進まないの。やっぱり魅力ないのかな。」
あまりのことに、類に同情した。
どうしたらそんな事考えられるのか・・・。
あれだけ類に大事にされ愛されてるのに、当の本人がこれでは
うかばれねーよな。
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あたしたちは、ずっと友達以上恋人未満のような関係だった。
建前は友達だったけど・・・実際は。
その時、あたしにとって花沢類は非常階段で
何かあった時飛び込める、特別な場所だった。
お互いのことをよくわかり合えてたと思うし、
どんな気持ちでいるのかも・・・よく分かった。
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牧野はちっとも分かってない。
俺がどんな気持ちで・・・あんたの傍にいるのかってこと。
晴れて恋人同士になった俺たち。
俺は司と同じ失敗は繰り返したくない。
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☆このお話は、「あなたがあたしにくれたもの」の続編です。
バレンタインから、付き合い始めたあたしたち。
今までだって、ずっと一緒にいたけど
友達と恋人じゃ・・・こんなに違うものなの?
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「・・・どうか・・・類をよろしく頼む。」
「そうね。あなたがいないと、ダメみたいだわ。」
思わず花沢類と顔を見合わせて、手を取り合った。
「「ありがとうございます。」」
手を繋いだまま、揃って頭を下げる様子を
満足そうに見守っていた。
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綾音さんは、お父様に付き添われ
帰っていった。
そしてリビングにはあたしたち・・・そして
花沢類のご両親。
あたしたちはどうすればいい?
二人の口からはまだ何も・・・語られない。
花沢類のお母さん・・・瑠璃さんが口を開く。
「あなた、もういいんじゃありません?類の気持ちは
充分・・・」
「そうだな。・・・では、牧野さんの気持ちを
聴かせてもらおうか。」
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音楽を通じて心が近くなった。
どうしてみんなが幸せに・・・上手くいかないんだろう?
誰もが幸せになりたいと
必死で生きているだけなのに――。
心に響く二人の音色に、あたしは気がつけば涙を流していた。
胸がいっぱいで言葉にならない。
「すごく素敵だった・・・悔しいくらい。」
震える声で、そう告げた。
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「 ・・・ピアノだけは負けない・・・わたくしの唯一誇れるものなの。
きちんと手術も受けます。
それが終われば屋敷で大人しく・・・ですから、お願いです。
お父様・・・・。」
目を閉じて・・・ゆっくり息を吐き出した。
「好きにしなさい。決して無理はしないように・・・。
綾音は誰とも比べられない
私の愛おしい娘なのだから。」
「ありがとうございます・・・お父様。」
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「お願い。わたくしを見て・・・・」
なりふり構わない、綾音さんの言葉が胸に刺さる。
あたしが持てなかった勇気。
凛とした強さ。
でも、花沢類は譲れない。
その時、扉が開き一人の男の人が
血相を変えて飛び込んできた。
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あたしも花沢類に告白するって決めたんだ。
バイトが終わったら、花沢類の家まで行って渡そう。
驚くかな?
あの頃と気持ち、変わってない?
あたしは・・・苦しいくらいに花沢類が好き。
もう、隠せない・・・気持ちを解放するの。
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「花沢類。
あたしね、すっごく好きだよ。」
自分だけが幸せになるなんて・・・
そんな罪悪感から、どうしても抜け出せずにいて
ずっとくらいトンネルの中にいるみたいだった。
でもね、もう終わりにする。
あたし、約束したんだ。道明寺と。
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「くすっ。牧野は好きだったよな、俺のヴァイオリン。」
安心させるように、あたしを見つめて優しく
・・・あたしの大好きな笑顔を向けてくれた。
今までの緊張を忘れて、花沢類に見惚れる・・・。
それだけで、背中を押してもらった気分。
・・・あたしらしく。
そう思ったら、元気になれる。
「・・・・・類。」
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牧野が俺の背中に腕を回して抱き締めてくれた。
「あたしのこと、・・・諦めないでね。
頑張るから、どんなことでも。
二人で乗り越えよう。」
「あんたのこと、諦められるわけないでしょ・・・。」
「なんて言われたの?・・・あたしだって、知りたいよ。」
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「うーむ。その牧野さんには、会わせてくれんのか?
全てはそこからだ。
藤堂とのこともある。そう簡単には、
決められることではないだろう?」
「今は、牧野の話です。藤堂は関係ないでしょう?
牧野は、今・・・花沢にいます。
父さん達に会わせたくて呼んだから。」
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「ほう・・・。なら、聞かせてもらおうか?その状況を。」
今が、一番大事な時。
俺の話を聞いて牧野に興味を持ってくれるといい。
ちゃんと相手を見つけられたら、俺の気持ちを尊重してくれるとも
言ってくれていたからその言葉に嘘がなければ
頭ごなしには反対はされないはず。
俺にとって牧野の存在がどれほどなのかを
分かってもらわないと・・・・。
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「両親と、話してくる・・・。どこにも行かないで?
俺を信じていてね。」
あたしを・・・苦しいほどの力で抱き締めてくれる。
お願い。どうかあたしから花沢類を奪わないで・・・。
あたしは、類の傍にいる喜び、共に生きる幸せを知ってしまった。
一人では生きていけない・・・。
もう、あなたなしでは。
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「ね、あんたたち暇でしょ?」
「・・・そんな訳ねーだろ?俺たちは、デートなの。」
「あ、そう。」
さっさと踵を返すあたし。
「・・・・・・。」
「おい、待てよ。何の用だよ・・・。」
そんな邪険な態度を取られることは、
牧野以外ないだけに思わずあきらが引き留めた。
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人の声がする・・・。
ここにいる時は昼近くになるか、俺が起きていかない限り
この部屋に人が来ることはない。
親父たちが帰ってきた?
例えそうでも、・・・・こんな時間に来る事はないはず――。
高らかなノックの音と共に、ドアが開く。
ふわふわの巻き毛に整った顔立ち・・・・にっこりと微笑んだ顔は
女のあたしでも見惚れるほど。
どこかであったことある?
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類様のお側にずっと仕えてきた私たちでさえ
ほとんど記憶にない、優しい笑顔。
この家も変わっていくのかもしれない。
そう思わせてくれる何かが今の二人にはあった。
旦那様たちが戻られるのは、おそらく明日。
いいお返事がいただけることを
願うばかりだった。
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あの人混みで、牧野を見つけた奇跡。
この再会には意味があるんだ。
牧野が、誰かに振られたって嘆いていたけど
俺たちが、また出会うためには必要なことだったんだ。
無防備に、俺の腕の中で眠る牧野。
赤く熟れた唇に吸い寄せられるように、キスをしていた。
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「今後の話もゆっくりしたいし。
あんたのこと、両親に紹介しても良い?」
「はい。あたしで良ければ・・・。」
もう逃げないで、今を生きる。
新しいあたしたちの関係を始める。
そう誓い合ったあたしたちに迷いはなかった。
あたしたちの未来のために・・・。
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「あんたの魅力の分からない奴に、付き合う資格なんてないよ。」
「花沢類・・・ね、今日は付き合って。明日はオフなんでしょう?
あたしのために一緒に飲んで!」
「いいよ。今日だけじゃなく、毎日だって。
あんたフリーなら俺と付き合う?」
ほろ酔い気分のあたしに、言った花沢類の言葉。
ただ、花沢類を見つめてた。
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花沢類があたしを、壊れ物を扱うようにそっと
胸に抱き寄せ、髪を撫でてくれる。
あたしたちは、穏やかな波に身を委ね
幸せの余韻に浸っていた。
「もう一度・・・抱いて良い?」
「キュルキュル・・・・グー。」
返事の代わりに騒ぎ出したお腹の虫に・・・赤面。
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「「二人の再会を祝って!」」
チーンとグラスを合わせた音が静に響いていた。
あたしは急激に変わっていく、身の回りの現実に
ついて行けないでいた。
それよりも・・・
あたし自身が変わっていてるのかも知れなかった。
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「は・・な・・沢類。どうして・・・・?」
あたしはただ、見惚れるばかりだった。
あたしが高校を卒業する前に、道明寺と別れた。
英徳大には進まず、優希と一緒の短大へ進み
F4とは疎遠になっていった。
近況を知るのは、雑誌の特集や
電車のつり広告で・・・になっていって
もう・・・何年も会うことさえなかった。
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26歳独身。
某デパートに勤め、それなりに仕事をこなし
いわゆる人並みな生活を過ごし
人生で一番穏やかな時間を過ごしていたけれど・・・
あたしには波瀾万丈がつきもの?
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「ごめんね・・・花沢類、お待たせ。」
戻ってきた牧野は、後ろで一つにまとめていた髪を下ろし
ワンピースに着替えていた。
見事な黒髪が風に靡いて、変わらない牧野の香りがした。
すっかり、女らしくなった姿に
改めて会えなかった月日の長さを感じた。
ずっと一緒にいて見つめていたかった・・・・。
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想いを込めて、キスを贈る。
おでこに、そして鼻先に
目元・・・に光る涙を掠め取る。
「もう、泣かせたりしないから、離れないで・・・。」
ようやくたどり着いた唇に、想いの丈を注ぎ込んで。
何度も・・・重ね合わせ、お互いの存在を確かめる。
これが現実だと、実感したくて・・・。
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ゆっくりと振り返った牧野。
「・・・・は・・花沢類・・・。」
あの頃から変わらない、牧野だけの特別な呼び方。
信じられないとばかりに伸ばされる手――。
俺は言葉も発せないままに抱きしめていた。
牧野の鼓動と俺の鼓動が重なる・・・
そして止まっていた時間がゆっくりと動き始めた。
腕の中で牧野の肩が小刻みに揺れて、
胸に直接響く・・・嗚咽。
あまりに切ないその泣き方に堪らなくなった。
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キィーという扉の開く音
そして人の気配・・・・あたしは一気に覚醒した。
気配が・・・靴音が、香りが。
そしてあたしの全てが花沢類だってそう叫んでた。
振り向きたい・・・・これは現実?
それとも、都合のいい夢?
夢でもいいから、もう少し見続けていたい。
ドキドキと高鳴る鼓動・・・
あたしは覚悟を決めて、ゆっくりと振り返った。
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道明寺と別れたのは
あたしが大学3年の時・・・。
ちょうどその頃を境に
将来を見据えて、行動を始めたF4。
あれから、みんなそれぞれの道で活躍してる。
あたしは・・・立ちつくしたまま動けずにいた。
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今でも夢に見る・・・。
あの時、俺たちはまたすれ違った。
・・・はじめから、重なることのない運命だったのかも知れない。
「・・・・・・花沢類は特別な存在だよ・・・。
でも、・・・友達としか・・思えないよ。」
絞り出すように告げられた、あの声は震えていた。
「どうしても、ダメ?」
そんな簡単に、引き下がれる気持ちじゃなかったから
少しは牧野も、俺のこと想ってくれてるかも知れないなんて
都合のいい夢を見ていた。
最後までただ俯いて、顔を上げることがなかった牧野。
「ごめん・・・忘れて。」
そう言うしかなかった。
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真夜中にふと目が覚めて
パジャマの上から上着を羽織って
ベランダに出る・・・・。
東京は眠らない街。
夜には、地上の星が瞬いてる。
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日付が変わると同時
「生まれてきてくれてありがとう・・・牧野。
お誕生日おめでとう。」
大好きな人に抱き締められてあたしは
人生最高の20歳の誕生日を迎えた。
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冬の夕暮れは早く
山の稜線にオレンジの層ができるのを眺めるのが好き。
ここから見えるこの景色が好きで
夕暮れまでここにいたあたし。
今日は今年一番の冷え込みで、風も冷たい。
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今まで・・・気づかないふりしてて、ごめんね。
こんなあたしのこと、ずっと想ってくれてありがとう・・・。
あたし、こういう事に関して鈍いとこあるし
経験もないから余計に、なんだけど・・・。
自分でも分かってる。
恋愛に関しては臆病なんだって事。
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あたしの半身とも言える人に出会った・・・それが花沢類。
何度すれ違っても想いは、花沢類へと帰っていく。
道明寺とのこと、過去の思い出にすること
自分に許そうと思う・・・・。
「あたしも・・・すき。花沢類が好きなの。」
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花沢類の髪を洗いながら思う・・・
きれいな人ってどんな状況でも変わらないんだなって。
シャンプーをしていて頭は泡だらけにも関わらず
閉じられた瞳を縁取る睫毛は長く
目を閉じてリラックスしている姿も色っぽくて・・・・。
恥ずかしさを隠すようにふざけて聞いてみた。
「痒いところはないですか?」
「ん・・・」
「じゃあ流すからね。」
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「ね・・・一緒にお風呂入ろう?」
「花沢類?////」
「髪や身体・・・誰が洗うの?」
「そりゃそうだけど・・・あ、あたしが一緒に入るのは無理。」
「俺だって他の奴はやだ。牧野じゃなきゃ、無理!」
それだけ言うと、膨れてこっちを見ようともしない。
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今日は久しぶりに類とのデートだったのに・・・
1時間の待ちぼうけ。
そして・・・・。
うすうす感じていたことが現実に。
類専用のメールの着信音が響き・・・類がこれなくなった事実を知る。
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一緒にお茶を飲んで
二人の時間を楽しく過ごして・・・
こうしていると、あたしが雇われてる
なんていうこと忘れてしまいそう。
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本当に抱き締めてくれたなら、そんなに幸せだろう・・・
でも、今の俺は・・・傍にいてくれさえすれば
構わないとさえ思っている。
・・・このまま、二人でいられたらいいのに。
離せない・・・例えそれが契約でも。
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見慣れたはずのメイド服なのに、牧野が着ると印象が違う気がした。
何故か高鳴る鼓動・・・・。
牧野の動作を、見逃さないようにじーっと見つめる。
こんなにドキドキさせられるなんて思わなかった。
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花沢類は・・・あたしのために怪我をして
痛い思い・・・不自由な思いをしてるって言うのに
あたしに優しい。
あんたのためなら身体だって投げ出せる――。
今までだって、気まぐれでキスしたり抱き締めたり・・・
気ままにあたしに構うけど
そんなこと言ったら、
女の子はどんな気持ちになるか分かってる?
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すーっと傾いでいく身体。
くらっと目眩を起こしてよろけたとき、
踏ん張ろうとした足元に
階段のステップはそこにはなくて。
・・・・落ちていく。
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非常階段から足を滑らせて、落ちるあたしを庇って
花沢類が怪我をした。
骨は折れたりしなかったものの・・・
右手首のねんざ、そして、左肩の打撲。
両手がしばらく使えない?!
あたしのせいだ・・・落ち込むあたしに
「あんたを雇うから、俺の身の回りの世話をして。」
花沢類は嬉しそうに笑った。
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離れていた寂しさから、一緒に暮らすことをOKすると
あれから瞬く間に引っ越しを終え、同棲生活が始まった。
帰りが遅い、花沢類とはすれ違いの毎日だけど
あたしが朝、目を覚ますといつだって腕に抱き締められていて
それだけで嬉しかった。
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おまえっ、それはねーだろ?
髪を撫でて・・・そろそろ帰るわ、そう告げようとしたとき
牧野が俺の胸に倒れ込んできた。
とっさに抱きとめた俺は、牧野が眠りこけてるのを確認して
途方に暮れて、心の中で叫んだ。
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あの一件から2日後、類は今までにない行動力で
牧野を一人暮らししているマンションへと
引っ越しさせた。
いつも牧野の意見を尊重し、そっと寄り添うように
傍に居続けた類だったけど
やっと、動いた・・・決心したと言うべきかな。
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総二郎まで、墜ちるとは思わなかった・・・。
F4にとって今までも、牧野は特別な女だったけど
恋愛感情が絡むとやっかいだ。
一人しか選べないんだから。
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今回のことの起こり、それは。
花沢類が出張でいなくなって
・・・3週間ほど経った頃。
電話とメールだけのやりとり。
それがあたしたちを繋ぐ全てで、後もう少しで帰ってくる――
分かっていても、あたしは寂しくて寂しくてしょうがなかった。
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銀杏並木が晩秋の空に映える。
空はどこまでも高く澄んでいて、晴れ渡っているけど
北風が頬や耳を冷たくする。
手を繋いで歩く、俺たちの日常。
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牧野の高校卒業と共に知らされた事実、それは。
英徳大学には進学しないこと、そして司と別れたということ・・・・。
短大に通うようになった牧野を諦められず、あちこちに誘って
クリスマスイルミネーションで街が輝くこの季節
3年前にようやく恋が実った。
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二人きりで歩く、デート。
どこへ行くでもなく、公園を散歩するだけだったけど
特別なことはいらない。
二人でいる・・・・そのことが大切だから。
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花沢類の前では強がっていても
あたしは女の子なんだって、思わせられる。
好きな人の前では、自然とそうなるんだ。
抱き寄せるみたいに花沢類の髪に
手を伸ばした。
それに気づいた花沢類が、ふんわり笑う。
この笑顔があたしに向けられてるだけで
幸せだと思う。
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こうして人を待つのも悪くない・・・
すっかり冷めてしまった飲みかけのコーヒーを
テーブルの向こうへ追いやり
時計に目をやるともうすぐ約束の時間だった。
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※切なく甘く・・・秋collction
「小田和正」の曲からイメージしたお話です。
一応、「愛を止めないで」の続編になります。
あの時から、俺たちの関係は変わった――。
自分から抱きついておいて
おでこにキスすると真っ赤になって
「何するの!」って騒いでた。
「牧野が好きだから・・・だから、俺と付き合って。」
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「・・・・司を俺と比べたりした?」
「!!!!」
わかりやすい。
何も言わなくても、顔に出る牧野のことが
手に取るように・・・。
もしそうなのだとしたら・・・俺から逃げないで。
このままで終わらせるつもりはないから。
俺の方に向かって一本の道が延びているのが
見えたような気がした。
司と別れた今、牧野の未来の選択の一つとして
俺と歩む道がある?
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どうして、ココロの声に耳を貸さなかった?
きっと気づけるのは俺だけ。
友達と談笑していた牧野が
走ってくる俺を見つけて、固まる。
俺は、牧野の手を引くと強引に連れ去った。
「ね・・・痛いよ。」
「・・・・・。」
俺が連れて行ったのは、非常階段。
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※切なく甘く・・・秋collction
「小田和正」の曲からイメージしたお話です。
クリスマスを目前に控えた11月。
牧野は俺たちを呼び出して、司と別れたことを告げた。
「大学は続けろって言われて・・・最後だから、甘えることにした。
そう言うことだから。」
俺たちが驚いてるうちに、それだけ言うと
きびすを返し、校舎の中へと消えていった。
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きっと、道明寺の心を溶かしたのは滋さんなんだって。
これから、滋さんが道明寺を支えていってくれるはず、
そう確信した。
「道明寺には、滋さんが必要だって思う。」
「つくしがそう言ってくれるのが、一番嬉しいかも。」
「滋さん。道明寺が行くこと、教えてくれてありがと。」
「つくしにも類君にも、司にも・・・私にも必要だったと思う。
私、NYへ行く準備しなきゃ!つくし、またね。」
勢いよく走り出した、滋さんの後ろ姿を見送る。
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司は私が傍にいることを拒まなかった。
そのことがただ嬉しくて舞い上がっていた。
けど、いいのかな。
NYへ行くこと・・・。
他の仲間には知らせずに行くつもりなのかな?
・・・つくしにも黙って行くような気がした。
司は自分のしたことをよく分かっていて
だから、自分から離れようと決心したんだ。
本当につくしが好きなんだね・・・そう思うとちょっと悔しい気もするけど
私はそんな司に惚れたから。
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天井を仰ぐと、涙が後から後から流れる。
苦しい・・・切ない・・・後悔の嵐。
どうしようもないのに。
俺はこれからどうすればいい?
その時、後ろからそっと抱きしめられた。
その手は優しく温かかった。
振り払うこともできたのに・・・出来なかった。
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道明寺とはすれ違ってしまったこと。
そのことを受け入れるのには時間がかかったけれど、
人生は一度で、あたしは花沢類を選んだ。
今の時間を大事にしたいし、
道明寺にもそうしてもらいたい。
今までの時間は無駄じゃなかった。
あたしたち二人がそう思えたら、
最高の出会いだったねって笑い合えるかな。
いつか、そうやって過ごせるときがくるかな・・・。
あたしがそんな風に思っていた頃――。
道明寺は、苦しみの中にいた。
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仕事で着ていた窮屈でしかないスーツを着替える。
「牧野・・・。」
部屋のベッドに寝転がって、思い返すのは牧野のこと。
司が記憶を戻したって聞いたときの不安そうな顔・・・
俺と司で奪い合って壊れるのは
テディーベアだけで充分。
でも、牧野の気持ちが俺にあるというなら
もう手を離すなんて出来ない。
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・・・あたしは一人じゃないんだ。
そう思うと、心強かった。
花沢類や美作さん、西門さん。
優希、滋さん、桜子・・・・みんなあたしのこと大事に思ってくれている。
あたしは、花沢類を選んだんだから
自分の気持ちに正直に生きるしかない。
強くなりたい、そう思った。
道明寺が落ち着いたら・・・もう一度きちんと
話し合わなきゃいけない。
二人が先へ進めるように――。
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「ごめんね・・・道明寺。あたし、あんたの記憶が戻るの
待ってってあげらなかった。」
「この女とは今すぐここで別れる。
だから、もう一度俺と」
「牧野は!俺と付き合ってる。」
道明寺にその先を言わせまいと・・・
牧野をこれ以上苦しめないようにと、花沢類が宣言した。
道明寺は目を見開いて、その動きを止めた。
あたしの肩を掴んで揺さ振る。
「牧野!嘘だろ?なんとか言えよ!!
・・・な・ん・・で・・・・!!何でいつも類なんだ?!」
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急に慌ただしくなった。
怒鳴り声まで聞こえてくる・・・・
道明寺が、医者の制止を振り切って
あたしたちの方へやってきた。
真っ直ぐに、あたしだけに向けられた視線。
・・・道明寺、記憶が戻ったんだね。
あたしたちは・・・そう確信した。
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総二郎に殴られた司が気を失って
病院に運ばれ
うわごとで「牧野・・・・」って呼んでいた。
そんなことを聞かされて、落ち着いてなんかいられなくて。
ドキドキ・・・そんなもんじゃない。
心臓がせわしなくて、パンクしてしまいそう。
緊張で、指の先が冷たくなっていくのが分かる。
これからどうなるんだろう?
不安だけが募っていった。
花沢類・・・。
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「い・・・や、いや、嫌、嫌ぁ!!!」
あたしの絶叫と、ブラウスの破れるのとが同時で。
気がついたら、座り込んで自分を抱きしめていた。
道明寺は、西門さんと美作さんに二人がかりで
押さえつけられているのが目に入った。
「牧野・・・大丈夫か?」
美作さんが労るように声をかけてくれる。
その声に我に返ったあたしは、弾かれたように走り出した。
足は自然と非常階段へ向かう。
そこに、花沢類がいなくても・・・少しでも癒されたかった。
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非常階段を下りて、校舎の裏を抜けて近道して
教室へ戻ろうとしたら、道明寺が現れた。
怖い・・・何を言われるんだろうと思うと
逃げ出したくなる。
段々近づく二人の距離。
横を通り過ぎるとき、無視するわけにもいかず
軽く挨拶して・・・
そのまま教室に戻ろうとしたのにすれ違いざまに
捕まれた腕。
「お前・・・類のうちにいるんだってな。
どんな手で、類を落としたんだ?」
「!!・・・・。」
「俺も楽しませてもらおうか。」
「何言ってんの?離して!」
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好きだと思うほど
離したくない・・・離せない、と思えば思うほど苦しくなる。
司が記憶がないからこその態度だって事。
牧野への想いは解ってる・・・でも、もう譲れない。
幸せなのに・・・
俺たちはちゃんとお互いを想い合ってるのに・・・
不安は尽きることがなかった。
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「司のあの態度、知ってるだろ?
それで頑張れなんて・・・酷だよ。牧野のこと見てて
辛かった。気持ちをはき出させてやりたかったけど
それもできないで、牧野・・・屋上から飛び降りるつもりだったんだ。
限界で、壊れそうだった。
だから、俺にしなよって・・・もう頑張らなくていいって
そう言ったんだ。」
「・・・・・。」
あきらも、総二郎も驚いた顔で牧野を見つめる。
「俺たちが追い込んだんだな。悪かったな・・・。」
「お前が類を選んでも、俺たちは責めたりしないぜ。」
「西門さん・・・美作さん。ありがとう。」
牧野が流す涙は、どうしてこんなに綺麗なんだろう・・・。
そう思いながらじっと見つめていた。
二人にも知っていていて欲しかった・・・
俺たちの始まりを。
司を裏切った罪悪感は拭えないけど
牧野を守りたかったんだ。
放っておけなかったんだ・・・。
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「お前ら・・・どうなってる訳?司・・」
「俺らが話すから、あきらは黙って聞いてて。
総二郎も呼んで一緒に・・・何度も同じ話したくない。」
「ああ、そうだな・・・うちにくるか?」
「その方がいいかも。」
牧野の状態、司と別れたこと、そして俺たちのこと――。
あきらと総二郎には、知っておいてもらった方が
いいと思った。
美作邸のリビングで俺たちは総二郎がくる間
お茶をいただいていた。
牧野が落ち着き無く、しゃべり続け・・・
チラチラと、俺をみる。
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その時、角を曲がってきた人影と牧野がぶつかる。
とっさに牧野を引き寄せ、抱きしめるけど
ぶつかった人影は・・・・頭を抱え蹲っていた。
「司・・・!?」
もの凄い勢いで、顔を上げ睨みつけたかと思うと
「ってぇ!何しやがんだ!!」
いきなり怒鳴りつけられる。
そして、ようやく気づいたみたい・・・。
「・・・・類?はぁ・・・またお前か。」
「司こそ、どうしたのさ?こんな朝早くから・・・。」
「あぁ?海をおくってきたんだよ。
これから、帰って寝る・・・・ってか、頭痛ぇ。
その石頭、マジムカつくぜ。」
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牧野を手に入れた・・・昨日。
何度も抱きしめ合ってキスを繰り返し
二人で眠りについた。
朝起きたとき、俺の腕の中に牧野がいる、そう信じていたのに。
・・・それはどんなに幸せかと思ってたのに
あんたは一人でさっさと起きて、部屋にすらいなくて
思い通りなんてちっともならない。
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牧野の肩を抱き寄せ、耳元で囁く。
「あんたに触れていないと、気が狂いそうになるんだ。
責任とってもらうよ?」
セピア色した瞳に、甘く切ない色が浮かぶ。
少し潤んだように見える瞳が、その表情が色っぽくて
ドキドキが止まらない。
そんな目で見ないで・・・あなたに・・花沢類に、囚われてしまう。
抵抗できなくなるじゃない・・・。
花沢類の腕が伸びて
あたしの身体を抱きしめる。
それだけで、幸せな目眩を感じる。
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「じゃあ、デーとしよう。行きたい所ある?」
「デート?」
「ん、俺たちの始まりを記念して。」
「じゃあ・・・ススキ!見に行かない?」
「ススキって、あの秋の七草のだよね。」
「ススキを馬鹿にしてない?
あのね、凄く綺麗なところ、知ってるの。
今日は晴れてたから・・・今から行けば、夕日も見れるかも。」
「じゃ、そこに行こう。」
「うん!!」
あたしは嬉しかった。
こんな風に普通にデートできることが。
それはいつもあたしが望んでいながら、なかなか実現できなかった
ごく普通の・・・ありふれた幸せだった。
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「・・・一緒にうち、帰ろう?」
俺の差し出した手を牧野が握り返す。
そんな些細なことが、胸に迫る。
二人の恋の終わりを
今、俺がこの目で見届けた。
そして俺は、牧野を幸せにするためにここにいる。
ゆっくりでいいから
少しずつでいいから
一緒の道を歩めるようにしたいんだ。
今はただ、隣に立つことを許されたことが嬉しくて。
疲れ切った牧野を、包み込んであげたかった。
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つくしが涙を流しながら、
それでも真っ直ぐに見つめて「さよなら」を告げる。
司は何か言いたげな表情をしたけれど
「言いたいことはそれだけか。」
結局それだけ言うと、きびすを返して屋上を後にした。
残された俺たち。
牧野は、司の出て行った扉をじっと見つめていて
そして、崩れるようにしゃがみ込んだ。
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あたしは、道明寺にさよならするけど。
でも、花沢類がいてくれる・・・
そう思うと、がんばれる気がした。
花沢類と付き合うって決めてから、
気持ちが楽になったんだよ。
前を向いて歩けそう。
その一歩を踏み出すんだ。
「よし!」
気合いをいれて、制服に着替えた。
朝。窓から光が差し込む――。
カーテンは昨日閉めてあったはずだし、
朝が弱い俺のことを起こしに来るのも
もっと遅い時間のはず・・・。
「花沢類。・・・起きないと遅刻だよ?
起きないなら、先に行くよ。」
「・・・牧野。」
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結局、俺は司を裏切ることになるんだろうか。
記憶がないうちに牧野を奪うことは
そう言うことなんだ。
でも、もう俺は・・・この想いをなかったことになんて
できないんだ。
司・・・・ごめん。
記憶のない司が苛立ちを牧野にぶつける。
何よりも大事だったはずなのに。
そう思うとやりきれない。
今は司を裏切ってしまう事より、牧野を悲しませたくない
・・・そのことの方が大事だった。
この腕に抱いた温もりを感じて、つかの間でもいいから
幸せに浸っていたかった。
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「逃げないで・・・。」
ビクッと身体を震わせ、動きを止めた頬にキス。
手のひらで頬を包み、ゆっくりこちらを向かせた。
視線がせわしなく泳ぐ。
あんな事して煽っておいて、今さら照れるなんて。
「抱きしめ合って眠ろう・・・。
それとも・・・一晩中キスしててもいいよ。」
牧野の身体をベッドに運ぶ。
抵抗もしないで、大人しくて・・・ギュッとしがみついてくる。
俺の方がおかしくなりそう。
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そっと腕を解いた花沢類の視線とぶつかる――。
「牧野、キスがしたい・・・。
あんたの苦しみを溶かしてくれて
俺のことしか考えられなくなる魔法のような
・・・そんなキスがしたい。」
あたしは胸が苦しくなる。
花沢類の言葉の一つ一つが
心に響く。
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花沢類に髪を触れられるたび、ドキドキして
くすぐったいような、嬉しいような気持ちがこみ上げてきた。
頭で考えるより、心は正直だ。
花沢類という存在に、癒されていた。
あたしの求めていたのは
心から安らげる
こういう穏やかな時間かもしれない。
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コンコン――。
「あたし・・・あの、牧野です。」
扉が開かれ、花沢類に中へ迎え入れられた。
背後でかけられた鍵に・・・ドキン、ドキン。
心臓の音が聞こえそうなくらいだった。
静まれ、心臓。
・・・花沢類は心配してくれてるだけ。
あたしを無言でじーっと見つめる花沢類。
どうしていいか分からず、
立ち尽くすあたし。
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思わず力が入った手に痛みが走り、
あたしはハッと我に返った。
・・・このまま流されてもいいと思ってた。
「ご、ごめんなさい・・・。」
手を解いて突然立ち上がったあたし。
「ごめん・・・俺の方が悪い。
あんたの気持ち分かってるのに。
抱きしめるだけ
・・・だから、今晩ここにいて。」
縋るように見つめる瞳があった。
あたしはなんだか堪らない気持ちになった。
「花沢類はあたしを守ってくれるんだよね?
嫌な夢見そう・・・だから。
一緒にいて・・ほしい・・・。」
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「お願い・・・お願いだから、自分をもっと大事にして。
こんなんじゃ、片時も目が離せない。
何も考えないでいいから。
牧野・・・俺を見て。」
花沢類の言葉が胸にしみていく。
「ここに・・」
「ん?」
「ここにいても・・・いいの?」
そう呟くように、言葉にしたら
花沢類が奪うように・・・あたしにキスした。
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あたしは急いで、とりあえずのものを用意して
花沢類が待つ、クルマへ。
そして、一緒に花沢邸へ向かった。
何度か訪れたことがある、花沢類の部屋―。
「部屋を用意させるから・・・適当にしてて。」
そう言い残して、出て行く。
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「あんたが学校へ来たことに気づいてなかったら・・・
俺を帰そうとしたあんたの様子が気になって、
戻ってこなかったら・・・、あんたを失うとこだった
永遠に。」
返す言葉もないあたしをじっと優しく見つめる。
「ね。もう、いいよ・・・頑張らないで。
司の記憶がなくなってから、牧野はずっと頑張ってきた。
もう、司のことで傷付かないで。
・・・・俺じゃ、だめ?」